配偶者居住権と配偶者短期居住権は、どちらも相続時に配偶者の居住を保障する制度ですが、それぞれ異なる目的や内容を持っています。以下にそれぞれの違いと特徴を説明します。
1. 配偶者居住権
配偶者居住権は、配偶者が亡くなった配偶者と住んでいた住居に引き続き終身で居住できる権利です。2020年4月に施行された改正相続法で導入されました。
配偶者居住権の概要
- 期間: 配偶者が生存している限り、住み続けることが可能。
- 目的: 高齢の配偶者が生活の基盤である自宅に住み続けることを保障し、生活の安定を図るため。
- 財産分割への影響: 配偶者居住権は、相続財産の一部として評価されます。つまり、配偶者がこの権利を行使する場合、他の相続財産(現金や他の不動産など)と合わせて総額が計算されるため、他の相続人と公平に遺産を分け合うことができます。
- 設定方法: 遺産分割協議や遺言、家庭裁判所の調停・審判によって決定されます。
メリットとデメリット
- メリット: 配偶者が引き続き安心して住み続けることができる。
- デメリット: 居住権が設定されることで、相続財産の中で住居に関連する財産の流動性が低くなり、他の相続人との調整が必要。
2. 配偶者短期居住権
一方、配偶者短期居住権は、配偶者が亡くなった配偶者と同居していた住居に一定期間短期的に居住できる権利です。
配偶者短期居住権の概要
- 期間: 原則として、遺産分割が確定するまでの間、または最低でも6ヶ月間は配偶者がその住居に住み続けることができます。この期間は、遺産分割の協議や調整にかかる時間を考慮しています。
- 目的: 配偶者が急に住む場所を失うことがないよう、一定期間住居の確保を保障するため。
- 財産分割への影響: 短期居住権は相続財産の評価には含まれません。あくまで一時的な居住保障のための制度です。
メリットとデメリット
- メリット: 配偶者がすぐに住居を失うリスクを回避できる。遺産分割が完了するまでの間、安心して住む場所が確保される。
- デメリット: 短期的な権利なので、長期的な居住は保障されていない。
3. 配偶者居住権と配偶者短期居住権の違い
項目 | 配偶者居住権 | 配偶者短期居住権 |
---|---|---|
居住期間 | 終身(配偶者が亡くなるまで) | 遺産分割が確定するまで、または6ヶ月間 |
設定方法 | 遺産分割協議、遺言、裁判所の調停など | 法定で自動的に発生 |
財産への影響 | 相続財産として評価される | 相続財産の評価には含まれない |
目的 | 長期的な住居の確保 | 一時的な住居の確保 |
まとめ
- 配偶者居住権は、配偶者が長期にわたり住み続けられるようにする権利で、遺産分割時に考慮されるため、他の相続人との調整が必要です。
- 配偶者短期居住権は、亡くなった配偶者と住んでいた住居を短期間確保するための権利で、相続財産には影響を与えませんが、長期的な保障はありません。
どちらの権利も、配偶者の生活を守るための重要な制度です。