相続土地国庫帰属制度の3つの要件

相続土地国庫帰属制度の申請ができる要件について以下に説明していきます。

同制度の適用を受けるには、1)ヒトに関する要件 2)物(対象土地)に関する要件 3)金銭に関する要件

目次

1)人に関する要件

  1. 相続人または包括受遺者であること:
    • 相続土地国庫帰属制度は、相続や包括遺贈によって土地を取得した者が対象です。つまり、相続人または包括受遺者であることが必要です。                                      (この条件は、逆読みすると「相続、遺贈」以外 例えば生前贈与を受けた土地はダメということになります。)
  2. 相続または包括遺贈によって土地を取得したことを証明できること:
    • 土地を相続または包括遺贈により取得したことを証明する書類(例えば、戸籍謄本や遺言書など)が必要です。
    • 対象土地の謄本を取得して取得時の原因が「相続」となっていれば法務局の審査を一度通っているので条件クリアとなります。
  3. 取得時の原因が「原野商法」「別荘地の購入」の場合は対象となりませんが、その土地を購入したのが尊属(父、祖父など)でそれを相続した場合は対象となります。

2)物(土地)に関する要件

  法務省の例示は、ネガティブリスト形式で掲示して条件に当てはまる物件は引き取れない規定と なっています。

①建物が建っている土地                                         建物が建っている土地は引き取れないとなっています。 この条件は、大きなハードルの一つでパンフレット等では申請前に取り壊して申請しなければ受付できないような表記でもありますが、通常、建物を壊して残置物を処分するそして滅失登記迄行うと200万円から250万円ぐらいは費用が掛かります。もし、これで申請が却下になると費用が丸損でしかも固定資産税が翌年から更地評価となり3倍以上跳ね上がります。

しかし、ここでポイントは実は取り壊してから申請するのではなく、事前に法務局との相談の段階である程度審査が通るか否かの感触をつかんでおき「申請時には取り壊して、検査で見に来てもらう時には更地にしておきます。」と言いながら法務局の担当者と交渉すればリスクは相当軽減できます。 

②担保権、賃借権などの第三者の為の権利設定がある。農地であるが他人に貸してある。電柱、電線の地役権の設定がある。                                                    普通の宅地などに付いている抵当権などは完済して抹消する必要があります。まれに田舎の宅地・畑で大正期の抵当権や代物弁済予約などの関係者は全員鬼籍に入っているのが明らかな登記が残っていることがあります。これは一度該当物件の登記抹消をしたことがあるのですが、元本(20円とか100円ぐらい)と遅延損害金利息を累積計算した金額を法務局に供託して抹消手続きの許可をもらうことにより解決できます。

農地などで第三者に耕作をまかしていた場合など、返還交渉、またはその人に国の代わりに引き取りませんかと聞いてみます。 電柱、電線などは地役権設定がありひっこ抜くわけにもいきませんので、法務局に相談すると意外とそのまま引き取ってもらえるようです。                               

⓷地元住民が共同で利用している土地 (通路・墓地・水路など)                           水路や道路(公衆用)などで名義が共有になっているもの。他の所有者や管理組合長に引き取ってもらえないか相談してみることになります。

④土壌汚染地がある土地                                          工場の跡地、クリーニング業者があった土地などが該当しますが具体的な事例にあたったことはありません。     「土壌汚染対策法上の要措置区域」「形質変更時要届出区域」に該当しているようでしたら図書館で可能な限り古い住宅地図をコピーして該当地に工場などが建っていなかったことを証明する方法が考えられます。                                                 

⑤隣接する土地との境界が不明確な土地                                   この条件をクリアするのに「境界確認書」「境界確定図(測量図)」の作成と添付は必須条件ではありません。    容易な条件なら自分で杭を購入して該当場所に打ち込んで写真撮影を行い、図面を作成して提出すれば良いのです。もし、結構な面積の土地や山林、荒野などでしたら測量士に簡易測量と図面作成を依頼すれば20万円程度で法務省が求める要件をクリアできます。

一番の問題は、隣地所有者から異議が出ないことが条件となります。もし、隣地から苦情が出た場合は隣地所有者の求める場所に杭を移動すれば問題は解決しますので思うほど難しい要件とはなっていません。

⑥税金等の公租公課が未納になっている土地                                    固定資産税などが未納の土地は引き取ってもらえませんので、承認前に納付しておく必要があります。

次のページで相続土地国庫帰属制度(土地)の政令要件を説明します。

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